2009.09.19 Sat
歯周病で歯がグラグラになるのは、歯周病菌によっておきた歯ぐきの炎症が、歯の根っこを支えている骨に達し、その結果骨が溶けることによる、というのはテレビのCMなどでおなじみなので皆さんご存じかと思いますが、歯周病ではなく、あるいは歯周病と合併して骨が溶けて歯がグラグラになる場合があります。
それは何かというと、歯の水平方向や垂直方向への過剰な負荷です。
例えば、歯と歯の間の隙間が正常値を超えると、咬んだ時に食べ物が歯と歯の間に入り込み、クサビを打ちこんだような状態になり、横方向の大きな力がかかります。
あるいは咬み合わせが「高い」と、歯と歯が当たった時やずらした時にイレギュラーな力が根っこやその周りの骨にかかります。
それらの力が限界を超えてかかり続けると骨が溶け始めてしまうのです。
ちなみに歯の矯正治療は負荷で骨が溶けることを利用し、歯を移動させていくわけです。
歯周病はどちらかというと全体的に進行していく傾向があるのに対して、このように過剰な負荷がかかる場合は、部分的におきるのが特徴です。1本だけ歯がグラグラになることもありうるわけです。
原因は過剰な負荷ですから、それを取り除けば治るはずですが、いったん吸収した骨は簡単には元に戻りませんし、歯周病を合併していることも多いので、歯周病の治療も並行して行わなければならない場合もあります。
下記は上の前歯に隙間があり、かつ、歯周病を合併し、急激に骨が吸収したと思われるケースです。「歯がグラグラなのでなおして欲しい」。40代男性。
レントゲン画像。歯の隙間のある部分の根っこの周りの骨がごっそり吸収しています(赤矢印部分)。しかし骨の欠損の形状から、適切に治療をすることによって骨がある程度回復することが予測できたので、抜歯せずに治療で治すことにしました。歯の神経も死んでいて、根っこの先に楕円形状に影が見えます。根管治療も必要です。

根管治療をし、仮歯を入れて隙間を無くし、負荷がかからないよう、隣の歯と固定します。歯ぐきは見た目は酷くないですが、何度か腫れた形跡(白矢印)があり、歯ぐきの境目から膿が出てきます。歯周ポケットは6~9ミリ以上あります。

歯石除去やブラッシング指導など、基本的な治療の後、外科的に根っこの周りを綺麗にします。
歯ぐきをめくってみるとレントゲンで見えていた横の部分だけでなく、表側も完全に骨が無く、根っこの先まで見えます。感染をおこしている歯ぐきや組織を徹底的にソウハします。根っこの表面も適度に綺麗にします。右の黒く見えるのは縫合糸です。

約6ヶ月後の状態。仮歯と固定はそのまま。歯ぐきが少しやせていますが、歯周ポケットは表側で1ミリ、裏側で2ミリ。

レントゲンで中の状態を確認します。まだ完全ではありませんが、徐々に骨が出来はじめています。隣の歯の表面に残っていた骨から分化した骨の細胞が樹氷のように延びてきている感じです。根っこの先の影も消えています。生体が持つ治癒力を治療によって引き出しただけのことですが、結果が伴うと嬉しいものです。

状態を見て固定をはずし、仮歯を最終的なカブセモノにかえる予定です。
数日で終わるような治療では無いので、患者さん、術者とも根気のいる治療です。
それだけに経過が良いとお互いの喜びもひとしおです。
たかが1本の歯かもしれませんが、されど1本の歯でもあります。
食べ物が詰まるとか、かみ合わせがおかしいとか、何か気になることがあれば、できるだけ早めに歯科医に相談されることをオススメします。
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それは何かというと、歯の水平方向や垂直方向への過剰な負荷です。
例えば、歯と歯の間の隙間が正常値を超えると、咬んだ時に食べ物が歯と歯の間に入り込み、クサビを打ちこんだような状態になり、横方向の大きな力がかかります。
あるいは咬み合わせが「高い」と、歯と歯が当たった時やずらした時にイレギュラーな力が根っこやその周りの骨にかかります。
それらの力が限界を超えてかかり続けると骨が溶け始めてしまうのです。
ちなみに歯の矯正治療は負荷で骨が溶けることを利用し、歯を移動させていくわけです。
歯周病はどちらかというと全体的に進行していく傾向があるのに対して、このように過剰な負荷がかかる場合は、部分的におきるのが特徴です。1本だけ歯がグラグラになることもありうるわけです。
原因は過剰な負荷ですから、それを取り除けば治るはずですが、いったん吸収した骨は簡単には元に戻りませんし、歯周病を合併していることも多いので、歯周病の治療も並行して行わなければならない場合もあります。
下記は上の前歯に隙間があり、かつ、歯周病を合併し、急激に骨が吸収したと思われるケースです。「歯がグラグラなのでなおして欲しい」。40代男性。
レントゲン画像。歯の隙間のある部分の根っこの周りの骨がごっそり吸収しています(赤矢印部分)。しかし骨の欠損の形状から、適切に治療をすることによって骨がある程度回復することが予測できたので、抜歯せずに治療で治すことにしました。歯の神経も死んでいて、根っこの先に楕円形状に影が見えます。根管治療も必要です。

根管治療をし、仮歯を入れて隙間を無くし、負荷がかからないよう、隣の歯と固定します。歯ぐきは見た目は酷くないですが、何度か腫れた形跡(白矢印)があり、歯ぐきの境目から膿が出てきます。歯周ポケットは6~9ミリ以上あります。

歯石除去やブラッシング指導など、基本的な治療の後、外科的に根っこの周りを綺麗にします。
歯ぐきをめくってみるとレントゲンで見えていた横の部分だけでなく、表側も完全に骨が無く、根っこの先まで見えます。感染をおこしている歯ぐきや組織を徹底的にソウハします。根っこの表面も適度に綺麗にします。右の黒く見えるのは縫合糸です。

約6ヶ月後の状態。仮歯と固定はそのまま。歯ぐきが少しやせていますが、歯周ポケットは表側で1ミリ、裏側で2ミリ。

レントゲンで中の状態を確認します。まだ完全ではありませんが、徐々に骨が出来はじめています。隣の歯の表面に残っていた骨から分化した骨の細胞が樹氷のように延びてきている感じです。根っこの先の影も消えています。生体が持つ治癒力を治療によって引き出しただけのことですが、結果が伴うと嬉しいものです。

状態を見て固定をはずし、仮歯を最終的なカブセモノにかえる予定です。
数日で終わるような治療では無いので、患者さん、術者とも根気のいる治療です。
それだけに経過が良いとお互いの喜びもひとしおです。
たかが1本の歯かもしれませんが、されど1本の歯でもあります。
食べ物が詰まるとか、かみ合わせがおかしいとか、何か気になることがあれば、できるだけ早めに歯科医に相談されることをオススメします。





NO TITLE
歯の具合だけは自然に良くなることはないのですね。
>アンクルンさん
そういう事です。気をつけましょう。
そういう事です。気をつけましょう。
FROM:Luke55@上杉神社で並び中 URL 2009.09.21. Mon 10:29 [EDIT]